音楽学ぶ過程で、あいは楽器を演奏したりする際に、「ここの和声進行は・・」など、「和声」ということをよく耳にすると思います。

西洋音楽における和声の仕組みの基盤ができあがってくるのは18世紀前半のことです。
もちろんそれ以前にもその萌芽はありましたが、19世紀を経て20世紀の初頭までには音楽の様々なエッセンスを吸収した「和声理論」が完成の域を迎えていきます。

ある調のなかで同時に響くいくつかの音を感得し、その音群が時間とともに進行して「音楽」を形成していくのですが、そこで大切なのは、進行と終止形を意識して楽曲に向きあうことです。その状況を具体的に感じ取るプロセスの根拠となるのが「和声理論」です。

一般的な古典的和声進行ではＴ→Ｓ→Ｄ→Ｔのように進行します。このうちＴ系和音（おもにＩ度に代表される）は調を決定する重要な和音です。

また、人間が呼吸するように和声も呼吸しながら進行していきます。
長い音楽では数回呼吸します。
短い音楽では一息で唱いきることもしばしばです。

すなわち、短い音楽では途中に終止が出現しないこともしばしばみられることです。これは後に一部形式と呼ばれるものに具体化されていくのです。

この呼吸が様々な「終止」という概念を生んでいきます。その方法や種類によって半終止、全終止、偽終止、変終止などに分別されます。
古典音楽ではそれらの終止にそれぞれ固有の役割があるのが一般的です。


例えば半終止はＶの和音（属和音）、全終止はＩの和音（主和音）、変終止はＳ系和音すなわちIVからＩに至る終止法が一般的です。そして偽終止は、半終止と全終止以外の形態をとるのですが、一般的にはＴ系和音あるいはS系和音をもって充てます。しかし、この偽終止には例外的処理が多くあり、その謎を解き明かすことが和声法理論の役割の一つなのです。

和声とは難しいもののように思われがちですが、そこには演奏解釈にも通じる多くの謎が隠されていて、とても奥深く魅力あふれるものと言えます。（八杉忠利　記）

（続く）